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川上未映子 『ヘヴン』

評価:
川上 未映子
講談社
(2009-09-02)
コメント:ヘヴン

JUGEMテーマ:読書
 

この荒涼とした世界で生きていくしかない我々には、未だ答えの見えない問いが山積みである。
やっと何か大事なものでも手に入れたと思っても、あっという間に去っていく。
まったくひでぇところである、この世界は。

あらゆるものは多面的で、それらで構成されるこの世界はとても重層的である。
重層的な世界の奥の奥まで目をこらそうとするとき、この荒涼とした世界は、それでいて美しさを見せることがある。
それは答えでも問いでもなく、ただ、果てしもなく美しい。



なぜこの世界はこんなにも荒涼としているのか。
それは百瀬のような野生的な考え方を持ち、しかもそのことを冷笑的に肯定して思考停止してしまう人間が多数いることが一因であろう。
一見、あのような考え方は厳しいところに自身の身を置くように見えて、実はとてもラクをしている。
彼の言うように世界を相対的なものとして単純化してしまったとしても、その上で人間同士が争うことなく少しでもマシな生活をできる方法を模索していくほうが、実はよっぽど大変なことなのだ、と思う。
そして、人間はより良い世界を模索していくべき存在なのだと思う。
今までもそうしてきたし、それがあって今の日本はこんなにも恵まれた社会になって、これからもより良い状況を求めていく不断の努力をしなければ、世界はまた荒れ果てていってしまうだろう。
百瀬に言ったら、荒涼としていることの何がいけないのかわからない、と笑われてしまうのかもしれないけれども。


コジマが汚くしているのには理由があり、百瀬が斜視に興味がなかったように、世界は多面的で重層的である。
それは人間にかかわることに限らず、「僕」が最後に見たように、世界のほぼ全てのものごとにあてはまる。
そして、世界は美しい。



最後まで読んだのにわからなかったのは、二ノ宮と百瀬の秘密である。
彼らは性の秘密を共有しているように思ったのだが、そこは解釈に任せられているのだろうか。


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「あの子たちは、……本当にね、なにも考えてないのよ。ただ誰かのあとについてなにも考えずにその真似をして、それがいったいどういう意味をもつことなのか、それがいったいなんのためになるのか――、わたしたちはね、そんなこと想像したこともないような人たちのね、はけぐちになってるだけなのよ」コジマはためいきをついた。

(中略)

「わたしだって最初はすごく悔しかったわよ。すごく。だってわたしがこんなふうに汚くしているのは、お父さんを忘れないようにっていうだけのことなんだもの。お父さんと一緒に暮らしたってことのしるしのようなものなんだもの。これはわたしにしかわからない大事なしるしなんだもの。お父さんがどこかではいているどろどろの靴を、わたしもここではいてるっていうしるしなのよ。汚さにもちゃんとした、ちゃんとした意味があるのよ。でもね、あの子たちにそんなこと言ってもぜったいにわからないのよ。そう思わない?」

(p.94より)
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この記事に対するコメント
こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
藍色 | 2013/02/08 4:59 PM


こんにちは。コメントありがとうございます。
昔の自分の書評など見るとずいぶん稚拙で恥ずかしくもなりますが、見つけていただいて嬉しいです。
kach | 2013/02/09 11:56 AM













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