This Is The One! - innocent -俺にとってのお気に入り(The One)を公開していくブログです。最近は目にしたものをどんどん書いていく形になっています。いっぱい書くからみんな読んでね。
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JUGEMテーマ:読書 小松左京の小説は、なにしろ数が多い。 そのすべてが面白いのであれば、これほど幸福なことはないが、実際は玉石混合といった具合である。 自らも認めるとおり、メモがわりに小説を書くような人だから、そうなるのは仕方のないことなのかもしれない。 しかし読むほうは大変なのだ。 どれが「当たり」かわからないが、とにかく数が多い。 その数が多いのを、俺が今まで読んだ中で乱暴に分けると、だいたい二つのタイプがある。 一つは、『日本沈没』のように、何か尋常ならざる出来事が起こったときに、人々はどのようにふるまうのだろうか、というタイプ。 人々のとまどいや混乱が、政治的経済的社会的心理的に描かれて、我々の日常生活というものに違った角度を与えてくれる。 もう一つは、『果しなき流れの果に』のように、人間を宇宙的視点で見た場合に、それはいったいどのような意味をもつ存在なのであろうか、ということを探り、描き出していくタイプ。 俺が大好きなのは、こちらの小松左京だ。 『ゴルディアスの結び目』、『氷の下の暗い顔』、『虚無回廊』などはこちらだろうと思う。 そして読み終えたばかりの、この『神への長い道』は、そのタイトルからもうかがえるとおり、後者のタイプに属するのである。 その思索の方向としては、『果しなき流れの果に』とまさに同じほうを向いている。 この宇宙が生成変化していく中で、人間が生まれたこと。 そして何よりも、その人間が精神を抱え、宇宙を認識すること。 その神秘を問うていこう、という方向である。 『果しなき流れの果に』では生物間に認識の階梯差が存在する中、ある人間が階梯を一気に駆け上ることで、まだ知らない認識の高みに至ろうとした。 『神への長い道』は生物同士の横のつながりの中で、手探りで進んでいこうとする様子が描かれる。 このような、人生に対する強烈な意味づけが、俺が生きていくことの大きな勇気になることがある。 しかし一方で、何ものにも意味を見出さない唯物的な視点が、大きな勇気を与えてくれることもある。 昨日読んだ『弥勒戦争』という山田正紀の小説では、小松左京とは対称的に進化そのものを疑い、むしろ退化ではないか、という視点が提示されていた。 生きることは喜ばしいことなのか、ひたすらに苦行なのか、唯物のみを見るのか、精神の神秘を見るのか。 仏教ひとつとってみても、その歴史の中でとても大きく振れている。 ふーむ、俺はどうしようかなぁ。 ----------------------------------------------------------- エヴァの体をまさぐりながら、彼は、三、四千年も昔に行った、セックスの、遠い記憶をもまさぐっていた。 ――自分が、ほとんど、やり方を忘れてしまっているのに、彼はびっくりした。まるではじめての時のように、不細工に愛撫をすすめながら、彼は自分たちの上にひろがる暗黒の宇宙に、ふと眼をやった。 宇宙よ……しっかりやれ! そんな言葉が、突然胸の底にうかんだ。――と、ふいに何百億光年もの直径をもつ、巨大な宇宙が、ひどく親しいもののように感じられた。 ---------------------------------------------------------
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この記事に対するコメント
山田正紀では『デッド・エンド』が、「宇宙は神の卵」という発想の元に書かれており、同一テーマへの異なるアプローチとして興味深いです。
カメキチ | 2019/06/11 8:50 PM
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