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津村記久子 『君は永遠にそいつらより若い』

JUGEMテーマ:読書



たぶん、このタイトルは、英語で思考してみる人の頭から出てくる一言だよなぁと思いながら、手に取った。
「そいつら」というところには辛辣さを感じるし、面白そうだと。
You're forever younger than them.(?)
こういう、単純な事実を簡単に言うのは、英語のほうが上手い。
初出を見たら、元のタイトルは「マンイーター」といったそうですけども。
そう聞くと、確かにそれはそれでふさわしいように思える。
どんな名を冠するかによって、やはり印象は変わる。



あんまり正しくあろうとし過ぎると、何もかもが、というよりも人生が、他人事になる。
しかし、正しくあろうとしなければ、人生なんてでたらめで面白くもない、というのもまたおそらく事実だ。

この小説の主人公のホリガイさん、とても好きだ。
とっさの場面でしょーもないことばかりが口をついてしまって、いつまでたってもまともに人と関われてる気がしない。
自分をなだめすかして、説得づくでおとなしくさせておいて、それだからいつまでも自分は欲しいものにありつけないのだと責める。
自分が欲しいものにありつけないだけならまだしも、そのことでかえって他人に対してもおろそかにしてしまったような結果になる。
繊細で聡明で、自分の人生を台無しにしないように気をつけているせいで、なんだかいつの間にか部屋で一人きり、しょーもないことばかりをして過ごすようになっている。
人生を大切にするって、こういうことだったかな、と首をかしげる。
まぬけで笑えて、やっぱりちょっと悲しい。

何もかもに対して正しくあろうとすると、ただヘラヘラ笑っているだけの味気ない人になる。
それでいけないか、と問われれば、少しもいけなくないけれど。
ただ、それも一つの利己主義の現れというか、ただ保身のための日和見だとしたら、やはり醜いだろうとは思う。
ホリガイさんは、ようやく自分の捨てきれないこだわりと向き合い、そうと決まればパワフルに突っ込んでいく。
平等性だとか正しさはひとまず棚上げだけど、その姿は人間的で魅力がある。
それに、そこにしか人生はないのだろうとも思う。



小説の出だしから幕切れまで、一貫したテンションの文体で統一しててすごいなぁと思う。
全体の構成も、部分の細かなつくりも、ゆきとどいていてすごいなぁと思う。
俺は近ごろピアノを弾き始めて、弾いていると途中からだんだんリズムが狂ってくるのだけど、まぁでも楽しみで弾いてるんだから今の俺が楽しんで弾きたいリズムで弾けるんならなんでもいいや、適当に指にまかせてやっちゃえやっちゃえ、と思う。
ダメに決まってんだろ。
形式に向かって自分を合わせていくために、ピアノの前に座るのだ。
でたらめに楽しみたいだけなら、さっさと布団にもぐって眠っちまえ。
やっぱりここまで完成させてこその、小説だよな、作品だよな。

笑えて、考えて、いい小説だ。



「そんなふうにいろいろ考えつつも、言ってしまったら河北うんぬんよりも自分の道徳がおしまいになってしまいそうなので、思ったことをたらたら言ってしまわないように自分に緊張を強いた。」 p.162


「どうして今になって、他の人から口づてにきくような破目になるのだ、と自分を責めた。もっと早く、もう一度あの人に会いたいんだ、会わせてくれと言い張ればよかった、そんなことをわたしのような人間が言うなんておこがましいだなどと、自分を欺瞞している暇があれば。」 p.179




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